先日、初めてメルカリを利用した。
買ったのは古めの小説の単行本だ。
よその古書店で見つかったものは高価で、メルカリだけがまあまあ納得できる額だった。
だから買い物自体には満足している。
ただ、今回初めてメルカリで買い物をして、ここにはなんだか特有の文化があるようだぞと思ったのだった。
メルカリ初利用で気づいた独特の「メルカリ儀礼」
最初に断っておかないといけないのは、今回お付き合いした古書の出品者とは、支障なく取り引きを行うことができたし、不満に感じたところも一切なかった。今回の記事内容において含むところも全然ない。
あくまでメルカリ一般に醸成されている文化として、普通のネット通販の感覚で行くと、勝手が違うことがあったよというお話です。
メルカリはマナーがちょっとめんどくさい
商品を買った者は購入後すみやかに出品者に挨拶をしなければならない、ということに、まずは戸惑いがあった。
商品購入後に、購入者が出品者に対して挨拶文を送る慣行があるらしい。
今回ご出品の商品を購入させていただきました、みたいなことを、用意されたフォームから伝えるのだ。
それをしないと、出品者によっては不興を買ってしまい、購入者の評価が低くなることもあるという。
取引画面のフォームにもそのための定型文が用意されていたから、メルカリの運営側も、こうした出品者-購入者間の言葉のやり取りを推奨していると考えていいんだろう。
初心者はとりあえずこの文面のまま送っておいたらいいんだと思う。
ぼくも似たような内容で送った。
その後も、購入確認とか発送通知とかの段階を踏むごとに、出品者からのメッセージが取引画面に届いたりするので、新しい文面が来ていないかときどき確認する必要があり、初メルカリ体験はおっかなびっくりといった感じだった。
(基本的には、事務局からのメールが来たら取引画面を確認する感じでいいと思う。)
「個人間取引」という建て前
好意的に考えれば、メルカリはあくまで個人間取引の場であって、通販サイトではない、ということなのかもしれない。
実際にぼくが取り引きした相手も、蔵書を放出している個人の出品者のようだった。
とはいえ、メルカリには法人の出品者も普通にいるし、継続的に多数出品している個人であれば、(仮に個人事業主でなかったとしても) 実質上は業者なわけで、通販気分で注文したあとで個人的な挨拶も必要だったと知ったら、あらかじめそうした知識のなかった新規ユーザーは不安になってしまうかもしれない。
マナーがマナーとして機能するために
SNSで検索してみると、ぼくと同様に、こうした挨拶必須の雰囲気を持つメルカリ文化を煩わしいと感じている人もそこそこいたけれど、そうした人は思ったより少なくて、むしろ購入だけして挨拶してこない礼儀知らずに向けた怨嗟が渦巻いていた。
「民度」とか「地雷」とかいう、心が暗くなるような表現が散見されるし、とてもここには書けないような、火を吐くがごとき言葉で購入ユーザーを痛烈批判している出品者も中にはいた。
ぼくとしては、なにかというと礼儀の棍棒を振りあげるほうがよほど人として未熟だとつねづね考えているので、逆に挨拶なんて全くなしで済むほうがまださっぱりしていていいと感じるんだけど、そう思わない人も多いってことだろう。
中には購入前に挨拶してこなかった人には売らない(!)とかいう人までいて、初見殺しもいいところである。
メルカリでは、そんな内輪の謎ルール・個人ルールがどこに潜んでいるか、初心者には分からない。
気難しい相手を不快にさせているのではないかという疑心暗鬼が、どこからでも生まれるシステムだ。
過度に怖がることはない
本来、相手に迷惑をかけないようにするためのマナーが罠や落とし穴になるようでは、本末転倒だ。
でも、怖がることはない。極端な人はどこでも少数派だ。相手を普通の人間だと思っていれば、事務的なやりとりの中にも、最低限のコミュニケーションの言葉は自然に差し挟まれることになるだろう。
メルカリで購入以外にしなければならないこと
最初に書いたように、今回の取り引きに、購入者として困ったところはなかった。
商品にも出品者にも不満はないから、良い評価を付けた。
それでも購入以外に、一応、取引画面上でこれだけのことはやった。
- 購入直後のひとこと(短文)
- 出品者からの購入お礼メッセージに対する返事(短文)
- 出品者からの発送済みメッセージに対する既読マーク(笑顔の顔文字)
- 商品到着後のすみやかな確認報告とお礼(数行)+出品者評価(「良かった」)
たぶんこれが最低限のメルカリ儀礼であり、別の言いかたをすれば、ネット通販との違いなんだと思う。
まあもちろんぼくだって、出品者と購入者で必要なやりとりをすることが悪いとは思わないし、手ごろな値段で買えた本のお礼に、コメントをちょっと盛ってみるについてもやぶさかではない。
でもそうしたことが積み重なってサイト全体で上下関係に似た構造が強化されたり、排他的な空気が生まれてしまうようなら、そこにどっぷり馴染みたくはないと思うのだ。
ちなみに、ヤフオクではこうした挨拶強要のムードは全然なくて、特段の個人的なメッセージも一切不要のまま暗黙のうちに取引を完結するのが一般的らしく、ところ変われば文化も変わるものなんだなと面白みを感じる。
サービス発生年代のインターネット利用層によるオタクとヤンキーの文化の差だと言ったら、各方面から怒られそうだけど。