あまんきみこさんの「車のいろは空のいろ」シリーズを通読してみて、とてもよかったので紹介したい。
「これは、レモンのにおいですか?」の書き出しで始まる、小学校の国語教科書にも載っていたあまんきみこさんの「白いぼうし」は、実は運転手の松井五郎さんを主人公とする「車のいろは空のいろ」シリーズのなかの1作だった。
その「車のいろは空のいろ」シリーズは、現在ポプラ社で3巻組の本としてまとめられている。
この冬、ぼくはこれを毎晩1篇ずつゆっくり読んで過ごし、とても豊かな気分になった。
あまんきみこさん作「白いぼうし」ほかの松井さんシリーズを読む
ポプラポケット文庫版『車のいろは空のいろ』
ぼくは松井さんの出てくるこのシリーズを、ポプラポケット文庫版で読んだ。
文庫と名は付いているけれど、実際は新書サイズの本だ。
単行本のバージョンもあるのだけど、こちらのほうが低価格で手に取りやすい。
ぼくは最初に『春のお客さん』を購入した。7つの短編のひとつひとつがどれも心温まる話で、冬の夜、寝る前にコーヒーを飲みながら1作ずつ読んでいると、ストレスが霧のように消え去っていつも穏やかな気持ちになることができた。そうして残り2冊も購入。
松井五郎さんは「春野タクシー会社」の運転手で、空いろのタクシーを運転している。
その松井五郎さんがどことなく奇妙なお客さんたちを乗せて毎回遭遇する、不思議で心温まるエピソードの数々は、ストレスフルな日々を生きている大人の心にこそよくしみる。
各巻の収録作品一覧は以下の通りだ。
車のいろは空のいろ 春のお客さん
- 春のお客さん
- きりの村
- やさしいてんき雨
- 草木もねむるうしみつどき
- 雲の花
- 虹の林のむこうまで
- まよなかのお客さん
ブランコがこげなくて深夜の公園で泣いている小さい女の子との出会いから始まる「草木もねむるうしみつどき」が非常に印象に残る。
車のいろは空のいろ 星のタクシー
- ぼうしねこはほんとねこ
- 星のタクシー
- しらないどうし
- ほたるのゆめ
- ねずみのまほう
- たぬき先生はじょうずです
- 雪がふったら、ねこの市
「しらないどうし」は、ある三人家族を描いて三十三年まえの戦争の記憶をよみがえらせる。
車のいろは空のいろ 白いぼうし
- 小さなお客さん
- うんのいい話
- 白いぼうし
- すずかけ通り三丁目
- 山ねこ、おことわり
- シャボン玉の森
- くましんし
- ほん日は雪天なり
「白いぼうし」は今でも教科書に載っているようで、こちらのサイト「観音山フルーツガーデン」では、教材として夏みかんを小学校に無償で提供しているそうだ。とても人情味を感じる取り組みで、長く続いてほしいと思う。
このポプラポケット文庫の3冊は、どの本にも北田卓史さんの挿絵がたくさんあるのもいい。昭和のいいところが詰まっていると思う。
ほかに絵本『ふうたのゆきまつり』にも松井さんが登場するそうだ。