高校の現代社会の教科書を買った。実教出版の『最新現代社会 新訂版』で、3年前に発行されたものだ。
ぼくが高校生だったのは90年代。
差分アップデートのつもりで、この「今どきの現代社会の教科書」を何日かかけて読んでみた。
現代社会の高校教科書を読む
現代社会という科目
ぼくが高校生のころ、「現代社会」という科目があったかどうか、記憶が定かではない。
当時のぼくは受験科目として政経・倫理を選択していた。
教科書の目次を眺めると、たしかに政経・倫理と重なる部分も多いけれど、今どきの高校ではこういう内容も学ぶのかと思うような、意外な分野まで広がりのある科目のようだ。
実教出版 最新現代社会新訂版
内容は大きく5つのパートに別れている。
- 現代社会の諸課題
- 青年期
- 政治
- 経済
- 国際
このうち2つ目の「青年期」というパートが、高校時代に政経・倫理しかしなかったぼくには、異彩を放っているように見える。
現代社会の諸課題
最初にある「現代社会の諸課題」では、環境問題、エネルギー問題、生命倫理の問題など、ぼくが社会人になってからさらに重要度を増してきた社会的な課題が整理されている。
生物多様性・レアメタル・原子力と再生可能エネルギー・再生医療、電子商取引などの項目が、ぼくの高校時代との「差分」といえるだろうか。
「ネット被害をどう防ぐか」などの高校生向けのコラムも、合間合間に挟まっている。
青年期
ここでは青年期の自己形成と社会参加について概説されている。
倫理と保健体育と道徳と、さらに生活指導と職業選択ガイダンスが一緒になったようなパートだ。
図ではマズローの欲求段階説やユングの性格類型などが紹介されている。ジョハリの窓があったりやまあらしのジレンマもある。
哲学・宗教に関しては、高校倫理よりはずいぶんあっさりしている。
しかしジェンダーや、正義についての考え方(ロールズ、セン)にもページが割かれていて、この部分がここ四半世紀で教科書に追加されてきた箇所になるだろう。こういうのは90年代には大学に入ってから学ぶ領域だったと思う。
政治
高校の「政治経済」と同様に、民主政治の成立過程と各国の政治体制を見ていったうえで、現代の個々の政治的テーマが紹介されている。
そのなかで昔と違うのは、民族差別・外国人差別、障害者差別の項目が立てられているところだろうか。裁判員制度や沖縄の基地問題にも言及されている。
また、選挙権の18歳引き下げを受けたコラムもあった。
経済
企業の社会的責任について取り上げられている。実感なき好景気、格差から貧困へ、といったキーワードも90年代にはまだなかった。
架空請求、フィッシング詐欺といったネットで陥りやすい罠も紹介され、クーリングオフするときのはがきの書き方まで図解で載っているのは、時代を反映していると思った(クーリングオフは電話やメールではなく書面で行う必要があることを初めて知った)。
国際
国際分野では、同時多発テロ、アラブの春、タックスヘイブン、新興国の成長、変わるアフリカ、先住民族の権利といった新たなキーワードが追加されている。