満月ポンというお菓子がある。小麦粉に熱と圧力をかけて焼いたもので、大阪をはじめとする関西・近畿各県ではおなじみのお菓子だ。
僕の住む沖縄でも、これを売っているのを見かけることがある。
買って食べてみれば醤油味の素朴な風味で、よそへ移り住んだ関西圏出身の人がときどき無性に食べたくなるというのもわかる。
満月ポンとは
関西でメジャーな満月ポンは、大阪にある松岡製菓の商標だ。
昔は多くのメーカーで作っていたらしいが、今ではこの会社だけが製造している。
松岡製菓のサイトはそのURLもmangetupon.co.jp。
いまは手元にないから正確ではないけれど、満月ポンは直径でいうと6~7cmくらいか? 小さくて食べやすいサイズだ。
サイトからネットショップへ行くと味のバリエーションが醤油以外にもいくつかあるんだけど、その中に、「沖縄塩味」というのがある。
沖縄の天然塩を使用した、あっさりサクサク塩ポンせん
素朴な味に仕上げました。
これはわれわれ沖縄県民にとってなじみの深い、あの「塩せんべい」とほぼ同じものと言ってもよさそうだ。
見た目も一緒だし味も似たようなものだろう。
もっと言うなら、沖縄の塩せんべいのすべてが沖縄の塩を使っているとは限らないから、むしろこの沖縄塩味満月ポンのほうが、沖縄の塩せんべいよりも沖縄の塩せんべいと言ってももはや過言ではない。
沖縄の塩せんべいとは
沖縄でいう「塩せんべい」とは、小麦粉を熱すると同時に圧縮して型の中で爆発させて作る、せんべいとは言いつつも米粉は使っていない駄菓子だ。僕が子どものころ、昭和の時代からある。
せんべいというからてっきり材料を溶いて練った粉を焼いて作るのだと思っていたけれど、かなり前にテレビで見た製造工場では、型の中で粉を爆発させることでごく短時間で焼き上がっていた。
おそらく満月ポンも似たような方法で製造されているのだろう(そういえば米を材料にしてそうやって作る菓子はポン菓子という。沖縄でいう「はちゃぐみ」もそうだ)。
塩せんべいのほうは県内のいくつかのメーカーが作っていて、スーパーにも複数の銘柄が置いてある。
僕は昔はパンダのイラストを目印に買っていたが、今回はシーサーの絵のものを買ってみた。
まあ塩気・油気・食感などに好みはあるにせよ、味はどれも大差はないと思う。
ちなみにAmazonで「塩せんべい」で検索すると、おかきっぽいのとかサラダせんべいに似たのとかハッピーターンの形をしたのとか、沖縄県民が期待するのとはおよそ異なる種類のいくつものせんべいがヒットする。
塩せんべいの昔の食べ方
僕が子どものころは、このような塩せんべいは、学校近くの商店で駄菓子のケースに入れて1枚ずつ売られていた。
いまのようにスーパーで買って大人も食べるものではなかったように思う。
こんな駄菓子のプラスチックケースに入っていて、それが切れるとお店のおばさんが長ーい袋からせんべいを流し込んで補給していた。
当時の値段は1枚10円。
これをそのままかじるか、これも10円の「タカベビー」のチョコレートスプレッドを塗って食べていた。
中には、乾燥梅干しをこすりつけて梅味にして食べる子どももいたな。
今では最初から梅味の塩せんべいも売られているところを見ると、沖縄の子どもの中では、これもわりと一般的な食べ方だったのかもしれない。
昔を思い出して食べてみる
サンエー(スーパー)で塩せんべいと一緒にチョコレートスプレッドを買ってきた。
チョコレートはタカベビーのものが今でも売っている。昔はチョコジャム、または単にジャムと言っていたような気がする。
切り口付近の作りやイラストが少し違うが、基本的には昔のままだ。
これをぐるぐると塩せんべいの上に出して…、
子どものころはこれを指で均一に塗りたくって食べたのだけど、大人になったのでスプーンでやります。
けっこうたっぷり塗れてしまった。そういえば子どものころはチョコジャムを友達と二人で分けたりしたこともあったっけ。
ザクッとかじろう。
味はまあ昔食べたのと一緒か? 昔はもっとチョコ感が強かった気もする。
しかしそれにしても、思った以上に食べでがある。
糖分と塩分を補給するハイカロリー食のようでもあり、深夜の大人の小腹も十分満たせる。
昭和の子は厳しい経済感覚でお小遣いから20円をこれに割いていたのだけど、今回計算してみると同じものが税込み55~6円相当になっている。これが50円以上するかと思うと、元・昭和の子としては、駄菓子も高くなったもんだと感じてしまうな。
見た目そのまま、〇〇せんべい
駄菓子屋的な商店には、塩せんべいのほかにも、1枚10円で子どもの空腹を満たす「せんべい」があった。
これはえび味のせんべい。サクサクと塩せんべいよりも軽い歯ごたえで、僕にとっては食べごたえが軽いぶんだけ、塩せんべいより一段贅沢なお菓子だった。
そしてこのせんべいのことを、子どもはどう呼んでいたかというと…。
われわれはこのせんべいを、
脳みそせんべい
と呼んでいた。
見た目からの連想だけれど、子どもの発想はイメージを最短距離で結んでしまう率直さがある。
これ以外には、1枚20円で薄くて大判のえびせんべい(またはたこせんべい)もよく食べた。
どこのお店も、同じ菓子は同じ値段だった。
子どもの数が多かった昭和の時代には、いまよりも子ども向けの商売をしているお店も近所にまだ残っていたのだな。いまはもう、塩せんべいを1枚売りしているようなお店は少ないんじゃないだろうか。
満月ポンと塩せんべい
満月ポンには、「ぷっしゅん満月ポン」という成型不良の柔らかい製品もある。
これは塩せんべいでいうところの「天使のはね」と成り立ちが同じで、こちらもよく似ていると思った。
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