男性向けのペン字の本を選ぶ

男性向けのペン字練習帳は見つけにくい

くせ字がなおるペン字練習帳

数年前の一時期、ペン字の練習をしたことがある。

家にいて暇でやることないなら『ペン字』しようぜ
まあもとからインドア派なんだけれども、近頃は新型コロナの影響で外に出ないことが多いから、なにか自宅でできるスキルアップでもしようかな、ということで、ペン字の練習に力を入れている今日この頃。 ペン字そのものは、僕はコロナが流行する以前から始め...

そのとき選んだテキストは、和田康子さんの『くせ字がなおるペン字練習帳』だった。

この本はやはり長年ベストセラー1位になっているだけあって、自分の字が、(とくにひらがなで)どんどんうまくなっていくのが実感できた。

字の練習に取り掛かる最初の一歩として、誰にでもおすすめできる入門書だ。値段が550円と安いのもいい。

「男の字」の見本が欲しくなった

和田康子さんのテキストで練習してしばらくすると、周囲の人に「字、きれいですね」といわれることも実際に出てきた。

でもぼく自身は大きな満足とともに一つだけ小さな不満足を感じていて、それは字をきれいに書けば書くほど、その字が「女性の書く字」に近づいていくことだった。

たしかに以前よりずっときれいな字が書けるようになってはいるけれど、自分のキャラクターとはいささかの乖離がある。顔に似合わず字は…と、自分でさえ思う。

これは、テキストの著者が女性だから仕方ないのかもしれない。そもそも多くのペン字の本のターゲットユーザーは、女性がメインなのではないだろうか。

100%書き込み式 ペン字練習帳

そんなことを考えて、今度は男性講師の書いたペン字の本を買ってみた。

青山浩之さんの『100%書き込み式 ペン字練習帳』だ。

この本もひととおり練習して、漢字や文章中の文字のバランスを学ぶには、和田さんの本よりも優れたところがあると感じた。

しかしそれで自分の字が「男性らしい字」に変わったかというと、そんなこともなかった。

歴史的に見れば女性が発明したひらがなだから、講師が男性だろうが女性だろうが、楷書できれいに書けば、自動的に女性らしいたたずまいになるのは当然のことなのかもしれない。

読むだけで「うまい」と言われる字が書ける本

「男字テキスト探し」のことはしばらく忘れていて、数か月前に根本知さんの『読むだけで「うまい」と言われる字が書ける本』に出会って即買った。

この本は上記2冊とは少し性格が違っていて、練習帳というよりは、文字、とりわけ漢字を美しく書くための「ノウハウ集」といったほうがいい。

自分で字を記入していく練習用のページなどは用意されておらず、そのかわり、こういう作りの字はこう書くときれいに見えるといった解説の文章量が多い。

タイトルのとおり「読むことで学ぶ本」なので、二度三度と繰り返し読んでノウハウを身につけたい。

美文字の法則 さっと書く一枚の手紙

そして先日、同じく根本知さんの『美文字の法則 さっと書く一枚の手紙』を追加購入して、ここに至って、ようやく自分が望むテキストに近いものにめぐり合うことができた。

この本では、楷書・行書・草書で書いた挨拶状・断り状・お礼状などの手紙が、それぞれ10パターンずつ掲載されている。

本文は、見開き右のページに手書きの手紙、左のページでそのポイント解説という配置になっている。

やはり練習形式のテキストよりも文章の量が多く、なるほどとうなずくポイントもそれだけ多い。

また各パートを通じて文字の書き方をだんだん崩していくように手紙が配置されているので、そのどこかで、自分はこういうふうに書きたいのだという好みの書き方を見つけられるはずだ。

個人的には万年筆で書く行書のパートが「これこれ」という感じで、やっと探しあてた感があった。

紙を用意して実際に真似て書いていくと、文章の中では、ひらがなからしてこれまで練習してきた楷書の文字とはまるっきり違っていて、全然別ものだ。

行書は楷書とはまったく別の新しいスキルという印象で、その行書の崩し方を取り入れると、おすましした楷書から男性的な躍動感のある文字に変化するのが面白い。

今後はこれが自分の持ち前の手癖とうまい具合に混ざっていくことを期待している。

「著者の写真が表紙に載っている本の9割は○○」という経験則をぼくはもっているけれど、そんなぼくにとっても、この根本さんの本は良書だった。

ペン字のカタログという本来の用途とは別に、置いておけば実用文の文例集としても役立つ日がくるかもしれない。おすすめ。

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