ケンプのピアノ協奏曲集全30曲・計89トラックのセットを、Amazonでダウンロード購入した。その価格が1050円。
廉価盤CD1枚の値段で、14枚組相当の音源が手に入ってしまった。
円高時代の輸入ボックスセットだって、ここまで格安の商品はめったになかっただろう。
まあ値段のことはともかく、この協奏曲集はベートーヴェンの作品を中心として、リストやモーツァルトやシューマンを含むケンプの演奏キャリアを堪能できる。
僕にとってはなんといっても学生時代から愛聴していたケンプ/ライトナー&ベルリンフィルのピアノ協奏曲第4番が入っているのが嬉しい。ベートーヴェンのこの4番に限っては、僕はケンプの優しいタッチが好きだ。
当時最も好きなピアニストだったアシュケナージよりもタッチが柔らかくて、明るく、温かい。
もちろんダウンロードして最初に再生したのもこの曲だ。
柔らかいタッチが好きならおすすめ。14枚組全89曲が驚異の1050円
一応Amazonでの購入方法も説明しておこう。
商品ページはこちら。
まず「アルバムを購入」のボタンをクリック。
確認画面で、「円で支払う」をクリック。
購入手続きが済むと、今すぐ再生するかダウンロードするかを選べる。ここでSNSに投稿もできるようだ。
僕はダウンロードを選択。
こちらのWi-Fi環境のせいか思ったより時間がかかったが、「-」というハイフンのみのタイトルの、1.26GBのzipファイルがダウンロードできた。
それを展開すると、「ヴィルヘルム・ケンプ」という名前のフォルダができ、その中に「協奏曲録音集」というフォルダ、その中に89個のmp3ファイルが入っていた。画像などはない。展開後のボリュームは1.28GBだった。
またmp3のビットレートはファイルによって違い、最低147kbps、最高251kbpsだった。
商品ページには収録時間の記載はあってもmp3のデータサイズは書かれていない。購入前にあらかじめどれくらいの大きさかわかると、いまより買いやすいのだけど。
zipで丸ごと落とす方法以外にも、いったん購入が済めば、Amazon Musicから1曲から任意の曲数単位でダウンロードすることもできる。
購入済み→チェックボックスにチェックして→ダウンロードをクリックすればいい。
今回zipのダウンロードが遅かったので、次回からこういう大ボリュームのアルバムを買うときには、Amazon Music再生しながら数曲ずつダウンロードしようかと思う。
それでは、まだ全体の4分の1くらいだけど聴いてみた雑感を。
モーツァルトの初期のピアノ協奏曲はケンプ以外でもあまり聴いた記憶がないので、おそらく今回初めて聴いているのだろう。8番はどこをとってもかわいらしかったり美しかったりする佳品だな。モーツァルトをまだ全部聴いていないと思うと、人生にはまだ先があるなと思える。
おなじみの23番も、オーケストラ(バンベルク交響楽団)の厚みがやや物足りないのがいいほうに作用して、明るくころころと軽やかな演奏で新鮮に聴こえる。
ケンプの演奏は温かい。午前の光の差し込むピアノ室で、おじいちゃんが自分の楽しみだけのためにでっかい手を鍵盤に滑らせて演奏しているようなリラックスした雰囲気がある。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番はたとえばポリーニとベームのものだと、想像できるとおり硬質なタッチで音の粒立ちがよく、キラキラしているけれど、明快でキレがあるのはまあいいとして、第3楽章の終盤で急に筋肉質になってくるあたりはとくに、個人的にぼくがこの曲に持っているイメージとはそぐわない。
僕としてはもう少し全体に音が溶け合って響き合っているほうが好みだし、リラックスして聴ける。3番、5番はともかくとして、4番はそんなふうであってほしい。
そしてもちろんそのイメージを最初に与えたのはケンプなのであって、僕は要するに最初に聞いたこの曲のイメージを、卵から孵ったばかりのヒヨコのようにケンプに刷り込まれているのだ。
Amazonでは試聴もできる。試聴だけでもけっこう長時間のBGMになるはずだ。
同内容のCD版ボックスセットもある。