万年筆カートリッジから空きカートリッジへのインクの移しかた

カートリッジインク入れ替え

万年筆のカートリッジは、欧州共通規格のものを除けば、ほとんどが個々のメーカー独自の専用品しか使えないようになっている。

でも、複数のメーカーの万年筆を使っていれば、異なるメーカーのカートリッジインクを使いまわしたいと思うことはよくあるものだ。

今回はカートリッジからインクを抜いて、別の空きカートリッジに詰め替える方法を紹介したい。

万年筆カートリッジのインクの詰め替えかた

使用済みのカートリッジは、捨てずに洗って取っておくと好きなインクを入れて再利用できる。

今回は、パイロットのインクカートリッジから、ウォーターマンの使用済みカートリッジにインクを入れ替えてみよう。

空きカートリッジの再利用

右がパイロット、左がウォーターマンのカートリッジ。

容量の小さいほうから大きいほうに移すと、余ったインクを捨てなくて済む。

ほんとうは各メーカーのコンバーターとボトルインクを持っていればこういうことはしなくて済むのだけど、実用上は、空きカートリッジでも十分代用できる。

ボトルインクを買うのは、価格の安いカートリッジでいろんな色を試してみて、好みの色が定まってからでもいいのだから、まずは好きなペンで好きなインクを少しずつ使っていけるほうがいい。

パイロットのインクカートリッジ

パイロットのインクカートリッジは、こんなふうにプラスチックの円盤で蓋がされている。

これを万年筆の首軸に突っ込むことで円盤が外れて、インクが出ていくようになる。

インクの移し替えにはこういうインジェクター(注射器)を使う。

これは100均のダイソーで購入したもので、先は尖っておらず、もちろん人体には使えない。

100均にはスポイト(ピペット)も売っているけれど、スポイトよりも、こういう先の管の長くなっているインジェクターのほうがインクの詰め替えには使いやすく、おすすめだ。

万年筆のインクカートリッジはメーカーによりいろいろあるけれど、容量の大きいものでも1.5ml入るかどうかくらいのものなので、このダイソーの2.5mlのインジェクターはサイズ的にもちょうどいい。

ちなみにダイソーでは、このインジェクターは化粧品売り場の近くに陳列されていることが多いようだ。化粧水その他を小さい携帯用ボトルなどに詰め替えるのに使うらしい。

Amazonなどでもほぼ同じものがある。

蓋をはずしてインクを吸入する

画像では撮影の都合上、クリップで挟んでいるけれど、実際には手で持ってやる。

カートリッジをしっかり持って、インジェクターの先など硬いもので押すと、円盤状の蓋がはずれて中に落ちる。

このとき力任せにずぶりと押してはいけない。1mmくらい押し下げながらそれ以上は突っ込まないような、微妙な力加減が必要だ。さもないとインクが飛び散ってしまう。

成功するとこんなふうに内蓋が外れる。今回は少し指を汚してしまったけど、蓋は嵌まっているだけでそこまで強く接着されているわけではないので、慎重にやれば大丈夫。

蓋が外れたら、インジェクターでちゅーっとインクを吸い取る。

パイロットのカートリッジは1mlは入っていないようだ。

こんなふうに空になった。これも別のインクを入れて再利用できる。

ヨーロッパ共通規格のカートリッジ

こんどは吸い取ったインクをウォーターマンのカートリッジに注入する。

ウォーターマンのカートリッジはヨーロッパ共通規格なので、同じ規格のペリカンなどの万年筆にも使えるし、ペリカンのカートリッジをウォーターマンの万年筆にも使える。

ペリカンのインクカートリッジは割と安価で、色数も多くて初心者でも手に取りやすい。とくにターコイズは濃淡の出やすいきれいな色でおすすめだ。それを空きカートリッジに詰め替えれば、手持ちのどの万年筆でも使うことができる。

 

このようにウォーターマンのカートリッジの6~7割程度を、パイロットの黒インクで満たすことができた。

これをペンに差して詰め替え完了だ。

続いてインクを抜いた側のパイロットのカートリッジも洗った。中蓋はつまようじを使って取り去った。

この蓋が入ったままだと、表面張力でインクが奥に張り付いてしまいペン先のほうに流れないことがあるようなので、取れるなら取ってしまっていいと思う。

パイロットのほうにはパーカーのブルーブラックを入れた。専用のコンバーターがなくても空きカートリッジとインジェクターさえあれば、こうしてボトルインクも使うことができる。

写真の万年筆はコクーンだ。

入れ替えたばかりのインクで文字を書いてみた。右がウォーターマンのメトロポリタンDXに入れたパイロットの黒インク、左がパイロットのコクーンに入れたパーカーのブルーブラック。

メトロポリタンもコクーンもどちらも細字のペンなんだけど、書いた文字はごらんのとおり、コクーンのほうがあきらかに細い。

同じ細字(F)でも国産のほうが海外メーカー製より細いのは、漢字を書くのにそのほうが都合がいいからだという。では中国製の万年筆はどうなんだろう? 漢字の国なのでやっぱり細めなんだろうか。

字がひらがななのは、僕がいまペン字の練習を始めたところで、まだカタカナまで進んでないから(笑)。

 

プラチナのカートリッジ

パイロットのカートリッジには蓋が付いていたけれど、プラチナのカートリッジにはこのように玉で封がしてある。ちょうどラムネの瓶をビー玉で閉じているのと同じ仕組みだ。

これも精密ドライバーなどでぐっと押し込むことで封を外して、インクを入れ替えることができる。

セーラーのカートリッジ

セーラーのカートリッジの場合は、蓋が外れるのではなく、首軸に突っ込むことで樹脂の封が薄くなっている中心部に穴が開き、そこからインクが出る仕組みになっているようだ。

この中心部に爪楊枝を刺すと穴が開くので、そこにインジェクターの針を入れてインクを吸い出せば、別のカートリッジに移すことができる。

コンバーターについて

各社の万年筆に適合するコンバーターがあれば、今回のようなことをしなくても、ボトルのインクから直接インクを吸うことができる。

パイロットには現在con-40とcon-70という容量の異なるコンバーターがあって、コクーンにはcon-40が適合する。このcon-40は吸えるインクの量が少なめで、ユーザーからの不満もあるようだ。

プラチナのコンバーターは形状は同じで金色と銀色のものがあり、実勢価格ではリンク先の金色のほうが安い。

ペリカンとウォーターマンは同じ規格なので、コンバーターにも互換性があり、1本を使いまわせる。でもせっかくなら純正のほうが安心できるかも。

ほかにはモンブランやシュナイダー、エルバン、それに日本のオートも、ヨーロッパ共通規格のカートリッジやコンバーターを使うことができる。

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