オトナになって「ナントゥー」を食べたらおいしかったよ

ナントゥー

けっこう種類のある沖縄のお餅の中にあっては、少し地味な存在と思われる、ナントゥー。

黒糖色の餅の上にピーナツが三つ四つ乗っていて、表面に胡麻が振ってある。

丸かったり四角く切られていたり、それが月桃の葉っぱの上に乗っていることが多い。

このナントゥー、なにかしらの年中行事の時に出てくるものだと思うのだけど、ムーチーとかふちゃぎとかのメジャーなお餅のように、イベントのメインを張る食材としてスーパーのちらしに大きく載ることもないので、僕にはいまだに由来のよくわかってない、うちなー伝統食品のひとつである。

検索してみればナントゥーは「年頭」と書いてお正月に食べるものであるということは知れるのだけれど、そもそも分家の核家族だった僕の実家では、お正月といえば白い切り餅ばかりで、こうしたオーセンティックうちなー正月(そーぐゎち)御用達のお菓子には、親しむ機会が少なかった。

久しぶりに食べてびっくり

子どもの頃は、このナントゥーは仏壇のある祖父母の家に行ったときに見たような記憶があったり、母親がどこかから貰ったり買ったりしてきたのがずっと食卓に置いてあり、でもチョコレートやクッキーのほうが好きな子どもは、餡餅やかるかんなら食べるけどなー、などと言って積極的には手を出さない、そんな「昔の時代のお菓子」のイメージだった。

今では市場はもちろん、スーパーの団子やまんじゅうなどのコーナーに行けば、年中(ねんちゅう)行事の時じゃなくても年中(ねんじゅう)置いてある。

それでも長年、買ってまで食べようとはしてこなかったのだけど、たまたま本日の夕刻、コーヒーを入れてるときに母がくれたのをおやつにしたら、これがほんとに大人の口にちょうどいい美味しさで、長年のイメージがからりと変わった次第。

ほんのり生姜の味がして美味

ナントゥーは味噌味のものがメジャーらしく、だから子どもが好まないのも納得できる。

しかしきょう何十年かぶりで口にしたのは、味噌の味はせずほのかに生姜の香りのする黒糖味で、ういろうのように固いかと思えば柔らかく、どっしりしてるかと思えば軽く、空腹も手伝いはしただろうけどオヤこれは案外いけるのではと思う間に、目の前から口の中へ、口の中からのどの奥へと消え失せてしまい、ひときれではもの足りず、ナントゥーいやナンスリーくらい欲しかったと思ったオトナの味の逸品だったのでした。ごちそうさま。

空の皿

タイトルとURLをコピーしました