大人が英語と日本語訳を比較しながらはじめて読む『不思議の国のアリス』

なにかやさしい英語の本を読もうと思い、「講談社英語文庫」で検索して、その中からルイス・キャロル作『ふしぎの国のアリス ALICE’S ADVENTURES WONDERLAND』を購入した。

これと角川文庫の『不思議の国のアリス』(河合祥一郎訳)を一緒に読んでみたい。

ぼくはこれまで、日本語でも同書を読んだことがなかったので、はじめて手に取るいい機会だ。

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『不思議の国のアリス』の英語と日本語訳を比較しながら読む

『不思議の国のアリス』の文庫2冊

左が角川文庫の日本語訳、右が講談社英語文庫の原文版。

紙の本では読まないままスキャンして、タブ切り替え式のPDFビューアー「Sumatra PDF」で表示した。

軽快かつシンプルな PDF/ePub/コミックリーダー「Sumatra PDF」
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こちらが日本語訳の第1章の冒頭部分。

こちらが英語の原文版の同じ個所。フリーソフトのSumatra PDFは、このように複数のPDFを同時に表示してタブで切り替えながら読めるのが長所だ。

こうすれば、一段落ずつ交互に読んでいくことが紙の本よりも容易にできる。

英語と日本語の学習

まず自分で英文のほうを1段落読んで大意を把握したあとに日本語で読むと、自分のイメージと比べて河合訳はなんと生き生きと英語の文章を日本語の文章に移し替えていることかと思う。

第1章冒頭の2段落目。

これが河合訳アリスではこう訳されている。

 そこで、ぼうっと考え始めました —暑い日だったので、すごく眠たくて、なかなか頭が働かなかったのですが— ヒナギクの花輪でも作ったら楽しいかな。でも、わざわざ立ち上がって、お花をつむのは…めん……ど………。と、そのときです。とつぜん、ピンク色の目をした白ウサギが、ササッと、そばをかけぬけました。(河合祥一郎訳)

こんなふうに、翻訳だけを読んでいるときには強くは意識しない日本語のダイナミズムみたいなものも、交互に読むことで同時に感じることができる。

参考になるサイト

英文の理解が曖昧な部分や、どうしてそんな訳になるのか疑問におもう部分があっても、『不思議の国のアリス』には解釈や翻訳のポイントを解説しているサイトが複数あり、こうしたものがとても頼りになる。

(追記:でも読み進めていくと、どこのサイトも序盤で力尽きているようだった。)

こちらのサイトでは、原文と読解の要点をページ内に見やすく並行に表示している。

こちらのサイトが最後まで訳と解説をしてくれています。

ぼくはこの作品について、チェシャ猫やトランプたちといった子どもの頃に見聞きした断片的な知識しか持っていないので、はじめての『不思議の国のアリス』を、楽しみつつ少しずつ読んでいきたい。

河合祥一郎訳の評判はいいようで、ネットで読める文を比較する限り、ぼくも一番いい訳だと思う。

今回買った本にはどちらにも原典オリジナル版の挿絵が入っている。

ペンギンリーダーズの『ALICE IN WONDERLAND』も、Amazonのページで最初の方を試し読みすることができる。

このバージョンは英語の初学者用に易しく書きなおされているもののようで、今回買った文庫本のオリジナルの文章と比べて、ずっと簡単な英語(中3か高1の英語教科書くらいのレベル?)になっている。人によっては物足りなく感じられるだろう。

ラダーシリーズの不思議の国のアリス

ラダーシリーズ不思議の国のアリス

オリジナルを読み終えたあとでこちらも購入して読んでみた。基本的には原文の文章が尊重されていながら、難しい単語が易しいものに変わったり、変な歌詞の歌や言葉遊びのような混乱しそうな表現は別の言葉で言い換えられ、また物語の本筋とは外れる部分が省略されている。

たとえば序盤でウサギの穴の中でケーキを食べたあと、背が高くなったアリスが自分の両足に靴を贈る想像をする部分のおかしな宛先とか、鼠が語る「無味乾燥」な話などは割愛されている。

簡潔にされすぎて逆にあいまいになっている部分もあるものの、単語数にして原文の8割強のボリュームはあってエピソードは原文の通りに載っているので、日本語訳も含めて作品自体を未読の状態から読みたいなら、やや込み入った文のあるオリジナル版よりこちらのほうがすんなり読めそう。

難易度の例としてはこんな感じ。アリスが白ウサギを追って穴に飛び込む場面の比較。

considering が thinking に、dipped suddenly down が went suddenly down に、deep well が deep hole になるなど、意味を損なわない程度に単語が易しいものに置き換えられたり、引用した部分の最初の文では、オリジナル版で頻繁に使われている倒置もなくなり平易な文章になっている。

この本に限らずラダーシリーズの本には、巻末に辞書の体裁をした単語リストがついていて、本文中で使われている単語が載っている。わからない単語があればそこを参照すればいい。

『鏡の国のアリス』

さらにその後、続編となる『鏡の国のアリス(Through the Looking-Glass)』も英語と日本語で読んだ。ハンプティ・ダンプティはこちらに出てくる。

お話の展開は前作に輪をかけて奔放で、英語で読んだあとに日本語の翻訳を読まずにいたら、自分が読めたのか読めてないのか、そもそも何を読んだのか、よくわからないままだったかもしれない。日本語で読んでもなかなかのカオス…。

英語圏の子供たちは幼いころからすごいものを読んでるなと読みながら感じた。河合訳はすばらしいです。

『不思議の国のアリス』関連映画作品

 

そういえばシュヴァンクマイエルの『アリス』は見たことがあった。あれも本作が元なのか。取っ手という取っ手が抜ける奇妙な映画だった。

その他の英語文庫

講談社英語文庫はこちら。『ふしぎの国のアリス』以外にも親しみやすい作品が多い。

ライ麦畑やアルケミストなどに加えて、英訳版・星新一『気まぐれロボット』、漫画日本昔ばなしやOL進化論といったバラエティに富んだラインナップが揃っている。

難易度別リーディングガイド

Amazonには、洋書の難易度が語彙力に応じて絵本レベルから一般書レベルまでの17段階に分けて整理されたページがあり、自分が楽に読める英語の本を探すのに最適だ。ただぼくの環境によるのか「サンプルテキスト」のリンクがなぜか機能していないので、レベル別に並んでいる個別の本を開いて試し読みしてみることで、自分のレベルにあった本を探すといい。

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