キューンにこんなCDがあったとは。
このジャケットを見て、誰がスティーブ・キューンのCDだと思うだろうか。
スティーブ・キューン『IN CAFE』はけっこういいぞ
年代感不明のデザインテイスト
ジャケット画像を切り出してみました。
カプチーノ? カフェラテ?
徳間ジャパンコミュニケーションズより1997年の発売。
日本国内企画盤ということなんだろうけど、ヴィーナスレコードが彼の作品を次々出し始めた頃よりも、ひょっとしたら早いくらいではないだろうか。
裏面はギンガムチェックの上にオレンジ色の文字で曲名が並んでいて、たいそう読みづらい。
ブックレットには「イン・カフェ」と題した片岡義男の短編小説みたいな文章も載っていて、なんか全体に作りが初々しくて、妙な80年代っぽさもある。
「夢の中で見知らぬCDショップに入って棚をめぐり、気の向くままに1枚引っ張り出したのがこれだった」みたいな、不思議なたたずまいのCDだ。
「へえこんなCDがあったんだ。知らなかったなあ。やっぱりスティーブ・キューンっておしゃれな女の子たちに人気なんだなー」などと考えているうちに目が覚める。ああなんだか変な夢を見た…。
しかしそんなCDが実際にここにあるのである。
淡麗甘口なスタンダード集
さっそく聴いてみました。全部で9曲、トータルタイムは45分ちょい。
- Good Morning Heartache
- Black Coffee
- How About You
- People
- Tennessee Waltz
- Moon River
- All The Way
- When I Fall In Love
- Ev'ry Time We Say Goodbye
全編ソロ・ピアノである。少しだけライブ感のある響きがいい。
甘口という印象は確かにある。心地よく流れていく。音楽を聴いていることを忘れている瞬間がある。
ときおり各曲の耳になじんだテーマや、過去のキューンのアルバムで聴いたようなフレーズが流れてきて、耳がはっとする。
でもよく考えてみると、たとえばECMでのキューンのスタイルは、その反対の「辛口」だったんだろうか? それとも「硬派」? あるいは「理知的」?
『Remembering Tomorrow』にしても『TRANCE』にしても、スティーブ・キューンにはいつでもどこかしら甘口な部分があったんではなかろうかと、この演奏を聴きながら考えたりする。
ストリングス・アルバムの『Promises Kept』もかなり好きだった。カーリン・クローグの唱伴も。
今回の『IN CAFE』は、ベタなスタンダード集という感じはしない。飽きずにいつまでも聴けそうな気がする。隠れた名盤なのかもしれない。