コルテンの扱いがひどかった

『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』に出てくる、あるエピソードについてのちょっとした感想です。

マヨイの落とし物をすべて入手していないかたにはネタバレとなりますのでご了承ください。

コルテンの運命が悲しい

初回クリア後も、未発見の井戸や洞窟、ミニチャレンジを探してまだまだゲームを続けている。

先日ようやく最後の洞窟を発見して、洞窟内のどこかにいる「マヨイ」を攻撃することで手に入る、「マヨイの落とし物」もすべて回収することができた。

その後にコルテンに会うと、これまでに集めてきた落とし物を、すべて彼にあげるかどうか選択できる。

ご存じのようにコルテンは、前作ではマモノショップのオーナーとして出てきたキルトンの弟で、マヨイの落とし物を飲むことで伝説上の生き物「サトリ」になることを夢見ているという、一風変わったキャラクターだ。

集めてきたマヨイの落とし物をそのまま自分で持っていても使い道は特になさそうなので、もちろん選んだ選択肢はYESだった。

しかしその先の展開が、ぼくにとっては思いがけずショックだったのだ。

喜び勇んでマヨイの落とし物を飲み下したコルテンだったが、あれだけ熱望していたサトリになることはできず、ルミーに変貌したかと思うと何のせりふもなくリンクの前から逃げていった。

このときのぼくの驚き、戸惑い、落胆たるや。

あまりのことにスクショも撮れなかった。

 

願いが果たされなかったコルテンがかわいそうだったというだけではない。

ここに至るまでに長い時間をかけて未発見の洞窟を探してまわり、プルアパッドのセンサーでマヨイの居場所を探索しては、落とし物をひとつひとつ回収してきたユーザーの努力をも、これは完全に裏切る結末ではなかっただろうか。

サトリになるという夢は叶わず、ひとことも発することもできないまま逃げ出していくルミーの姿を見て「ぎゃっはっは、コルテン、当てがはずれてやんの」と笑えるユーザーが、想定された顧客像だったのだろうか?

このエピソードの結末だけは、ほかの多くのエピソードたちのそれと、トーンやテイストが、もっと言うなら哲学が、全然違っていた。

『ティアーズオブザキングダム』には、実にたくさんのキャラクターが出てくる。その多くは、メインのストーリーにはかかわらないハイラルの住人たちだ。

リトの村の子どもたちや、二人でお金を出し合って買ったニンジンをリンクにくれた馬宿の幼い兄弟や、ササノ君と仲良しのゾーラ族の女の子や、病身の夫を看病するゲルド族の女性や、ウマナリ楽団の面々や、シロツメ新聞社のペーンや、キノコを探して旅を続ける女子二人組や……、TotKに出てきたキャラクターたちは、誰もがみんな小さなエピソードを通じて各々の課題を解決したり、新たな展望を見出したりと、温かいヒューマンな状況へと一歩にじり寄ることができた。

こうしたゲームは結局のところ、無数の御用聞きを短時間で得られる効力感でつなぎ合わせた、報酬系を刺激するだけの消費パッケージでしかない…、そんなふうにいってしまえばそれまでだけど、前作も含めたこのストーリーは、リンクが上で例に出したような人々と関わりながら、それぞれがそれまでよりも少しずつ希望を持てたり、幸せになる姿を見てきたという、たくさんの小さな流れからなる大河でもあった。

すべてのエピソードが、濃淡はあれど、希望や幸福感といったポジティブな価値観で貫かれている。

しかしコルテンのエピソードにかぎってはそうではなかった。

マヨイの落とし物を全部飲んで、さあどうなるの? という期待はあるわけだから、その結果としてサトリになれなくてもいいんです。

ただ願わくはこんなふうに冷たく放り出すような形で終わらせてほしくはなかった。

コーガ様がこういう終わりかたなら、まだ笑える余地があっただろうと思う(コーガ様は結局どうなったんだ。イーガ団のメンバーは死んだと思っているようだけど…)。

でも顔がちょっと気持ち悪くて、ちょっと感情の起伏が激しいだけの、風変わりな紳士ではないですか、コルテンは。孤独と希望を縒り合わせて暗い夜に浮かんでいた一燭の灯し火だったではないですか。

そのキャラクターがストーリーの中で人生を賭けた、そしてユーザーにとっても長い長いクエストの結末として、この仕打ちはあんまりだ、と思った。異質でグロテスクな印象を受けた。

たとえ彼がサトリになれなくても、せめてユーモラスな感じで演出して、ルミーにはなったけどサトリと一緒にとりあえず幸せにやっていますよ、みたいな「その後」が描かれてもよかったのではないか……。

と、不意打ちのバッドエンドの衝撃からの回復の中で、そんなことを思った。

たびたびコルテンの話題を口にするナルシッソが、地底に行きたがっている。

追加のダウンロードコンテンツでは、コルテンも地底のルミーの巣にいたりするのかもね。

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