ふちゃぎとはどのようなものか

ふちゃぎ

ふちゃぎとは、沖縄のお菓子で、九月の十五夜、中秋の名月のときに食される餅のことだ。やや細長い餅に小豆がまばらにまぶしてある。

白い餅が多いが、僕は以前黒糖の茶色の餅も見たことがあるので、最近はアレンジしたものや新しいバリエーションも出てきているのだろう。

昔のふちゃぎと今のふちゃぎ

基本は塩味

現在40代の僕が小さいころは、味がしないか、ほんのり塩味を感じるふちゃぎが多かったし、きっとそれが昔ながらの正統派なのだと思う。

ふちゃぎ

いまスーパーで売っているものは、餅も小豆も甘いものが大半だと思うけど、あの味のしないふちゃぎをお月見の晩の義務のようにもさもさ食べていた(食べさせられていた)子供のころの思い出も、もはや懐かしく思える。

今でも市場の老舗のお菓子屋さんに行けば、オーセンティックスタイルの味のしないふちゃぎを買うことができるのだろうか。

数年前に母と昔話をしていて、「平和通りのあのへんに餅売ってるおばさんがいたよね」という話をしたのを覚えている。

たしかに以前、平和通りの壷屋側の三叉路近辺、市場の二階に上がるエスカレーターのあるあたりで、ガラスの蓋のついた木箱に入った餅を売っている女性がいたような、あやふやな記憶がある。

高校生の頃にそのあたりを毎日のように歩いていた時には見た記憶もないので、日常的過ぎて気にも留めなかったのかもしれないし、そのかたがときどきしか出ていなかったのかもしれない。

ささぎ餅(ささげ餅)との類似

北陸地方にもふちゃぎとよく似た「ささぎ餅」あるいは「ささげ餅」という餅がある。

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味もやはり塩味だそうで、このお餅を沖縄のひとに見せたら十人が十人「ふちゃぎ」だと答えそうだ。

吹上餅

ふちゃぎはヒヌカン(火の神・台所の神様)や仏壇にお供えしてからいただくものだというが、核家族の僕の実家では仏壇がなく、買ってきたものを夕食後にそのまま食べていたように思う。

吹上餅(ふきあげもち)が語源だということを知識としては僕も知っていたのだけど(たしかに吹き上げは琉球語の基本的な発音では吹ち上ぎになる)、その吹上餅がどのようなものなのか、ふちゃぎの原型になった元の餅があったのかどうかを含め、いまいちよくわからない。

僕は実際の売り場などで吹上餅という文字を目にしたり、誰かがそう言っているのを聞いたこともない。吹上餅と聞いて即座にふちゃぎのイメージが浮かぶ人はおそらく沖縄県民の中にも多くはないだろう。

ふちゃぎという謎の語感

ふちゃぎ。この語感が面白いと思う。声に出して読みたい沖縄語だ。さいごの「ぎ」はぜひとも鼻濁音で発声したい。

むかし(というほどでもないけど10年くらい前)、拾った子猫にふちゃぎという名前を付けて成長の様子を報告していく動画がネットで話題になり、DVD付き書籍にもなったことがある。

ペットの名前としてもユニークなので、お餅のふちゃぎを知らない他府県の人々は、子猫の名前として記憶している人が多いかもしれない。

ふちゃぎとエリザベス

ふちゃぎとエリザベス

かわいい名前だし、オイタをして叱ろうとするときも、「こら、ふちゃぎ!」だと、どうしても力が抜けるようでほのぼのしていてよいと思う。

中秋の名月と満月

満月

中秋の名月は、ご存知のように旧暦(太陰太陽暦)8月15日の月のことだ。

今年2019年は、9月13日の晩に出る月が中秋の名月になる。

中秋の名月は新暦(太陽暦)だとおおかた9月になるが、数年に一度くらい、10月に入ることもある。

旧暦15日の月は必ず満月になるのだと僕も最近まで信じていたのだけど、実はその翌日が満月になることもあるという。

今年2019年9月の満月も14日で、つまり中秋の名月の13日よりも翌日14日の晩のほうが、真ん丸い月を見られる年なのだ。

まあ季節のイベントだから、お月見を翌日にずらして行うひともいないだろうけど、13、14と二夜連続で月を眺めてみれば、普段は意識しない毎日の時間の流れを視覚的に実感できる夜になるのかもしれない。

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