動画サイトと光回線、そしてスマートフォンが普及したことで、ネットの記事や人との会話の中で気になるミュージシャンが出てきた時などには、すぐに検索して、タイムラグなしでその演奏を視聴することができるようになった。
しかしYouTube以前、もっと言えばインターネットが普及する前は、自分の知らないミュージシャンについての情報は、まず最初に雑誌などからの文字情報として接することがほとんどだった。
ことに日本のテレビの歌番組などには出てこない海外のミュージシャンについては、さらにその傾向が強かった。
ZABADAKほか、いままで誤解していたミュージシャンたち
そんなわけで、「音は全く聴いたことがないけれど、バンド名の字面だけは知っている」アーティストが、僕にはいまでも、洋楽を中心に山ほどいる。
FM雑誌(というものがあったのだ)や音楽雑誌の表紙に並んでいる名前なら何度か見た覚えがあるけれど、名前と顔も一致しないし、どんな音楽をしているのかを知ることもないアーティストたち。
結局彼らとはそれ以上に縁を深めることなく、そのまま年月が過ぎていった。
そうしたアーティストの映像に、いまさらのようにインターネットで出会って驚くことがたびたびある。
タイトルに入れたZABADAK(ザバダック)もその一つだ。
ZABADAK
ZABADAKは長い期間メンバーの変遷を経ながら活動しているグループだけれど、彼らのことをひとことで形容するのは難しい。すっぽりあてはめられるジャンルがない気がする。
僕にとっては、中高生だったバブル期~90年代の雰囲気を自然に思い出すことのできる音楽だ。トラディショナルかつ無国籍風な音楽で、当時の外国を扱うバラエティーやクイズ番組のエンディング曲の雰囲気がある。
しかし、僕は割と最近まで、このZABADAKを、「濁点ばっかりだからヘヴィメタとかハードロック系のバンドなんだろーなー」くらいに考えていたので、初めて聴いたときは本当にびっくりした。これがザバダックなのか…と。
お暇がある人はYouTubeであれこれ漁ってみてほしい。
それにしても、ZABADAKに限らないことだけれど、昔の20代・30代はいまと比べるとずいぶん大人でしたね。
シャカタク
そしてシャカタクのことは、てっきりイカ天出身のバンドなんだと思っていました。なんとなく、その語感から。
「イカ天」といっても若い人は知らないだろうけど、「いかすバンド天国」というテレビの音楽オーディション番組が昔あって、そこから幾多のバンドがデビューしていった時期があったのだ。
これも僕には、バブルの記憶と強く結びついている。ブルーハーツやBOØWYやXの存在とともに、当時のバンドブームの形成にも大きく貢献した番組だった。インディーズバンドという言葉も、このころに一般化したと記憶している。
BEGINやジッタリン・ジン、マルコシアス・バンプ、フライング・キッズ、そしてBLANKEY JET CITYも、この番組から大きく羽ばたいていった。
でもまあ、やっぱり若い人は、どのバンドのことも知らないのかもしれないけど。
「たま」も知らないのかもしれないけど。
番組の正式名称は「三宅裕司のいかすバンド天国」という。深夜番組だった。
なにしろ沖縄ではやってなかった(たぶん)ので、僕は番組そのものは一度も見たことがないのだ。一度も見たことがないのに、そこから出てきたバンドは何組も知っていた。
で、シャカタクである。
シャカタクがイギリスのバンドだということを、僕はこれまた最近になって初めて知った。
なんとなくこれまで、日本人の悪ふざけ的なバンドだと思っていた(…イカ天では、そんな毛色の変わったバンドが何組も「一発屋」的に登場してきて、それなりに有名になった)のだけど、外国のバンドだったんですね、シャカタクは。
ジャズ・ポップとでも言えばいいのだろうか。これを聴いていると、なんだか中学生の頃の、何もすることのない退屈な夜の気分がよみがえってくる。
シャカタクはSHARK ATTACKをもじったものだそうだ(へえー、いま知った)。
アンスラックス
この人たちにも、僕は全然違ったイメージを持っていた。アンスラックス(ANTHRAX)。
アンスラックスは、これまでスザンヌ・ヴェガとかバーシアとかジュリア・フォーダムみたいな、日曜の朝のFMで流れていそうなソフトな女性ヴォーカルのアーティスト(またはユニット)の箱に入れていた。
しかしこっちこそヘヴィメタだった。
誰か似た語感の名前の人たちとずっと混同していた可能性があるな。ユーリズミックスとかロクセットとか。アディエマスかな。
僕はロックにはまるで知識がなく、ハードロックやメタル系の細分化したジャンルにはおよそ見当もつかないので、「アンスラックスはヘヴィメタじゃないよ」という声ももちろん予想はできるんだけど、まあ、無知ゆえのイメージの貧困を笑ってもらいたい。
無知だからこそ地層の深いところにいろんな勘違いの種が温存されていて、ときどき意外な花がぽかりと咲いているのを見つけてこのように驚いているのです。
追記:ヴァンゲリス
この記事を書いた後に、また一つ長年の勘違いが発覚した。
ヴァンゲリス(Vangelis)は、バンドではない。
個人。
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